2015年7月7日火曜日

⓫大学病院のベットの上で子供が言った、僕だけがわかる子供の言葉

大学病院のベット
















『パ パ の バ カ』


そう口を動かしそっぽを向いた…

人工内耳を頭の中に埋め込む手術



そのための準備



僕自身の心の準備
子供の全身の検査
手術に対する同意書の提出


そこに子供の意思はなかった

だけど親である僕の独断と偏見で決めた
“人工内耳”の手術

色々悩んで悩んで悩みぬいて決めた手術

ようやくその手術の朝を迎えた






朝8時半から9時までの30分間が家族の時間




小さな体には負担の大きい全身麻酔

麻酔前の朝のわずかな時間が

僕たちに与えられた子供と過ごす貴重な時間







僕が悪役で

子供は大好きな‘仮面ライダーオーズ’役


いつも二人でよくやった
“仮面ライダーごっこ”


悪役の僕が子供の仮面ライダーへ襲い掛かる
最初はやられまくる仮面ライダーオーズ
しかし‘負けないぞー’と強くなった仮面ライダー

最後には悪役を倒しご満悦の表情の子供に



(お前も最後まで頑張れよ…)



と僕は心の中でつぶやいた







最高の笑顔のまま手術室に向かう子供とは

手術が終わる予定のお昼過ぎまで一旦お別れ



この後自分の身に何が起こるのか知らされてないまま
子供と別れても良いのか?一抹の不安のまま

子供に『いってらっしゃい』と笑顔で手を振った






久しぶりに夫婦で過ごす時間

大学病院の中だけど…



お昼過ぎ

そろそろ無事に手術も終わるかなぁ?
と子供が上がってくる予定のエレベーター前で待つ





その同じ空間にいた手足が不自由で車イスに乗った
小さな男の子




その男の子のお母さんがスプーンでご飯をあげていた時
その男の子が急に口の中の物を吐き出した…


あぁまたか~と言う表情のお母さんと視線が合う




僕がそのお母さんに向けた視線は
僕の子供と初めてスーパーに出掛けて
見知らぬ女性から向けられた視線そのもの
だったのかもしれない



しかし今の自分に出来る精一杯の行動
タオルで床にこぼれたご飯を拭き取った





たったこれだけの事かもしれないけど



ただあわれんだ目で視線を送り
その場を立ち去っていた今までの自分


ほんの少しの事だと思わず
とにかく今の自分に出来る行動をする
現在(いま)の自分



僕の子供が教えてくれた人としての勇気


その事を僕に教えてくれた
大事な大切な子供を待つ





予定より一時間程遅れて
先生が上がってきた


子供の左後頭部のレントゲン写真を片手に…

一瞬(僕の子供はどうした?)と不安になり




少しばかりの緊張




僕たちのその緊張感を読み取ってくれた

先生の表情でホッと一安心




先生『無事終わりましたよ』



本当に『ほっ』とした瞬間

簡単に手術成功の説明を受け

まだ麻酔が効いて眠っている子供は

直接病室へ運びますと



病室へ戻り

ようやく目を覚ます





頭にグルグル巻きの白い包帯

試合後の顔面を殴られまくったボクサーの様に
パンパンに腫れ上がり真っ白な顔



子供の痛々しい姿に

今朝一緒に楽しく遊んだ子供の笑顔はない




こんな小さな子供に大きな手術をさせた僕の決断


子供の明るい未来を信じているから
後悔はしないと決めた




実際に人工内耳の音入れまでの一週間位は
全く音のない世界


僕の顔を見るなり

唇を動かす


『あ』





『た』





『ま』




『い』




『た』




『い』










そして




『ぱ』








『ぱ』







『の』







『ば』








『か』








そのままベットの上でソッポを向いた



子供の小さな背中を見つめるだけの僕



そうだよなぁ

くるしいよなぁ

ごめんなぁ



と思いながら
仕事のため僕だけ病室を後にした…


まさに後ろ髪ひかれる気持ち









一時間後
妻からのメール
「あのあとすぐにベットの上に血を吐いたよ
 パジャマもシーツも替えてもらった」





麻酔の副作用…

小さな子供の体は限界だったのだ



そう手術前に説明を受けていても

自分の子供が口から血を吐く
自分の子供が口から血を吐く
自分の子供が口から血を吐く


あまり気分が良い物でではないなぁ





僕が病室を後にした直後に吐いたらしい


目覚めてからずっと気持ち悪かったのかもしれない

僕の前では必死に我慢していたのかもしれない




僕に背中を向けたのも子供の強がりなのか?

小さな抵抗






子供の意地を見せられた

男同士の意地…







僕も子供に負けない様に頑張ろう




僕より小さな子供が小さな体で頑張ったんだから…










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